理事長所信


2025年度 理事長所信
第68代理事長 室伏 寿美夫

(1)はじめに

『人生は選択の連続である』
 これは、かの有名な劇作家ウィリアム・シェイクスピアの作品のひとつである『ハムレット』の中の言葉です。この言葉の解釈は人それぞれですが、選択をせずに生きることは出来ません。普段私たちは意識の有無に関わらず、1日に1000個以上の選択をしていると言われています。この言葉を私なりに解釈し、考えを付け加えると、私は『人生は選択と挑戦の連続である』と考えます。人生という限られた時間の中でどれだけ意識を持ち、自分が成長することのできる挑戦を行うことができるのか。挑戦をしなければ成長することはありません。自分の意志で選択をしなければ失敗から学ぶことも少ない。人生は終わりのない挑戦です。
 そして、40歳までという更に限られた時間の中で活動する青年会議所はまさにその考えを学び、選択と挑戦を繰り返す実践の場であります。青年会議所では全ての会員に成長の機会が平等に提供されます。しかし、自分自身で「成長したい」という意識を持たなければ、自己の成長へは繋がりません。自らでその機会を求め、活用しようとしなければ、せっかく提供された成長の機会を逃してしまいます。私は2013年に小田原青年会議所に入会をさせていただいていから、多くの先輩方が挑戦する背中を見てきました。正直に申し上げればなんとなく、流れで入会をしました。しかし、多くの方々との出会いとご指導のお陰で、自らの変え方が変わり、物事の捉え方が変わり、何事も自分事と捉え、挑戦する重要性を教えていただくことができました。時には行動する中で壁に当たり、もがき苦しむこともありました、しかし、その過程の中で学び、その壁を乗り越えようと挑戦することを繰り返す。この終わりのない繰り返しの中で成長することが出来たと後から実感しています。私が青年会議所の活動を通して学ばせていただいたことの一つは、挑戦と成長の実感は同時ではないということです。だからこそ自らに向き合う姿勢と考え方を学び、挑戦を繰り返すことが重要なのです。そして、リーダーとして私が誰よりも挑戦する姿を見せていきたい。その背中が会員の成長に繋がり、地域の発展に繋がっていくことを信じています。

 小田原青年会議所は1958年5月16日、私たちの地域の志高き青年たちの手により、全国で139番目の青年会議所として設立されました。私たちの活動エリアである小田原市・箱根町・真鶴町・湯河原町は歴史や伝統文化、豊かな自然環境や観光資源など、有形・無形の多くの魅力を有しています。しかし、この地域に住まう我々はその魅力や資源を有効に活用できているのだろうか。地域の未来を担う子どもたちを地域の中で育てることが出来ているのだろうか。私たち会員が成長に繋がる活動が出来ているのだろうか。人々の価値観や魅力は普遍的なものがある一方、時代や捉え方によって常に変化します。私たち小田原青年会議所は2024年に創立65周年を迎え、現状に即した「創立70周年に向けたアクションプラン」を策定しました。このプランに基づき、今を生きる青年団体として、会員の当事者意識を引き続き育みながら、会員が常に新たな見識を身に着け、時代や環境に即した運動を展開し、変化を恐れずに挑戦を続ける必要があります。

(2)地域で活躍することの出来る人財育成

 私が2013年に小田原青年会議所に入会をして以来、多くの先輩方にご指導をいただきながら、考え方や物事の捉え方を学び、行動する背中を追いかけてきました。私は、青年会議所はまちづくりを通して人づくりをする団体だと考えます。組織を構成するのは言うまでもなく、個人(会員)です。家庭や会社など、それぞれの時間と費用を費やしている私たちの活動であるからこそ、在籍する会員が成長できなければ、活動する意味がありません。会員の資質が向上し、魅力ある会員が多く在籍する組織であれば、それは組織の拡大にも自然と繋がっていきます。日本青年会議所や関東地区協議会、神奈川ブロック協議会が実施する各種事業やセミナー等の機会を最大限に活用するとともに、現在の会員の状況を踏まえた成長の機会を提供することで、会員それぞれの立場は違えど、一人の青年として、社会人として、経済人として、活動を通して成長する機会を創出し、地域で活躍することのできる人財育成に取り組んでまいります。

(3)会員拡大と新たな新入会員育成

 小田原青年会議所においても、コロナ禍を機に会員が大きく減少しました。会員が減少すれば事業費の減少や事業の波及効果の低下が懸念されます。会員が一人でも大いにこしたことが良いことは言うまでもありません。しかし、ただ数を増やせばいいわけではありません。そして、現状をマイナスに捉え、嘆いているだけでは現状を変えることはできません。私たちの活動に共感し、活動を通して会員が成長し、地域から必要とされる存在にならなくてはいけないのです。そこで最も重要なことは「想いの伝播」です。会員全体で意識共有をしながら、青年会議所の存在意義を理解したうえで、私たちの想いを伝え、会員拡大を図ってまいります。
 また、青年会議所活動は全会員に成長の機会が平等に与えられます。しかし、活動の内容を理解し、自分事に捉え、目的意識を持って参加をしなければ得られる学びは少なくなってしまいます。特に新入会員に対してその意義を伝え、フォローアップする体制の構築は必要不可欠です。私たち現役会員が一人ひとりの新入会員に対してフォロー体制を強化するとともに、多くの経験を有するシニアクラブ会員の皆様にもご協力・ご指導を賜りながら、共に育成する体制を構築してまいります。

(4)地域資源の最大限の活用

 先に述べたとおり、私たちの住まう地域は多くの魅力や資源を有しています。神奈川県の最西端に位置する私たちの地域は海・山・川・湖などの豊かな自然環境の中、箱根・湯河原を中心に温泉を資源とする観光業が発展するとともに、小田原を中心に歴史・文化が色濃く残り、真鶴は漁業や石材業を中心に独自の魅力を有し、色彩豊かで文化の香りを感じる国際観光地域であります。コロナ禍が明け、以前にも増して私たちのエリアを訪れる外国人観光客数も増加傾向にあります。しかし、私たちは地域の魅力を最大限に活かし、その魅力を発信しきれているのでしょうか。私たちのまちで紡がれた歴史や文化、残された豊かな自然環境を最大限に活用し、効果的な発信をすれば更に多くの交流人口の増加に繋がります。そこには今までの魅力の活用に加え、新たなアイデアを加えることや、魅力同士を掛け合わせることでイノベーションを起こす必要があります。また、行政をはじめとするステークホルダーはじめ、私たちのまちをより良くしようと活動している他の団体や個人の方々との連携も重要です。常に新たな考えや意識を持つことに挑戦する青年団体として、さらに地域の魅力を高める事業を構築してまいります。

(5)人間力を育む地域教育

 私が考える子どもたちへの教育とは何か。それは子どもたちが安心して失敗できる環境を整え、失敗からヒントを得て成長しようとする姿勢を育み、繰り返しチャレンジする機会を与えることだと考えます。私自身も親が自営業という環境の中で生まれ育ち、家族だけでなく、身の回りの方や地域の方々にもそのような環境を整えていただき、育んでいただいたと思っています。そして、その原体験の中で私自身の人間性が形成され、現在の地域への想いを醸成することに繋がったと感じています。時代や環境が変化し、人と人との関りが減少している昨今、昔の人間関係が正しかったと一概に申し上げるわけではありません。しかし、そのような状況の中、教育のプロでもない私たち青年会議所ができることは、地域の未来を担う子どもたちに自己肯定感を養う成功体験、失敗から立ち直る強さ、他者を尊重する協調性などの人間力を形成する一助となる、子どもたちの原体験となる地域教育の機会を提供することではないでしょうか。だからこそ、波及効果の少ない教育事業を広く展開するのではなく、少人数でも深い効果を与えることのできる体験型の地域教育事業を行い、地域の未来を担う子どもたちがチャレンジできる体験を創出し、地域教育の重要性を改めて感じることのできる事業を展開してまいります。

(6)時代と実情に即した組織運営

 青年会議所の自己研鑽の大きな機会として議案と会議があります。現在の状況や課題、膨大な量の情報や自身の見解、様々な人からの意見などを踏まえて抽出し、目的意識の基に効果的かつ円滑な運営を実施するために作成する議案、また何度も繰り返しながら、時に長時間を要する会議。その仕組みの中に青年会議所会員の成長の機会が凝縮されていると言っても過言ではありません。しかし、現在の私たちを取り巻く環境は新型コロナウイルス感染症が今までの常識に加速度的に変化を与え、新たな価値観を芽生えさせました。そして、現在の小田原青年会議所に在籍する会員は会社に勤めている会員も多く在籍しております。SNSや電子会議システムが発達した現在において、時代や会員の背景に合わせ、限られた時間の中でより効率的かつ有効な組織運営を意識してまいります。さらに、本年で小田原青年会議所は公益社団法人となって13年目を迎えます。法の順守はもちろん、『公衆の日常生活に欠くことのできない事業』いわゆる『公益事業』の昇華に向け取り組む一方、法人格の見直しを含め、組織の在り方を議論してまいりました。どのような組織も社会や環境の変化についていけなければ消滅する運命にあります。地域によりインパクトを与え、効率的かつ有効な組織運営を図るべく、一般社団法人への法人格見直しに取り組んでまいります。

(7)結びに

 私は青年会議所活動を通して、また、社会を構成する一員として常に自分が「何ができるのか」、「何をすべきなのか」、「なぜするのか」を考えてきました。時代や環境が変われば、自ずと最善の選択や答えも変わり、人や状況によりその選択も変わってきます。極論を申し上げればこの問いに答えはありません。だからこそ、目まぐるしいスピードで変化する社会環境の中で私たち青年が為すべきことは何なのか。私にとっての答えは「常に考え、行動し、挑戦する」ことです。次代を担う子ども達に「努力をすれば報われる」と簡単に口にすることが出来ない社会状況かもしれない。しかし、成果を掴む人々の成功の陰には必ず努力する姿がある。他人がただの幸運と揶揄する裏にも、その幸運を手にするための努力が隠れている。努力をしなければ何も現状を変えることは出来ません。考えて行動した努力からはヒントを得ることが出来る。その繰り返しが私たちの成長に繋がるのです。しかし、一人で出来ることには限界がある。青年会議所には常に自己を研鑽し、地域を良くしようと活動する仲間がいる。私たちの前を走り、ご指導をいただける先輩諸兄姉がいる。切磋琢磨しながら、挫けそうな時は助け合い、その一歩を踏み出し、挑戦し続けましょう。撒かない種に花は咲きません。
 私は2013年に小田原青年会議所へ入会してから12年間という長きに渡り、多くの先輩に導かれ、成長させていただきました。先輩方から受け継いだ熱い想いを胸にしっかりと刻み、これまで66年の長きにわたり築かれた小田原青年会議所の歴史と伝統が刻み込まれた襷を受け継ぐ者として、常に挑戦することをお誓い申し上げ、公益社団法人小田原青年会議所2025年度 理事長所信とさせていただきます。