理事長所信


第62代理事長
村瀬 公大

【はじめに】
 2019年5月1日、日本は『平成』という一つの時代が終焉を迎え、日本として新たな始まりの時を迎えます。約30年間に渡る『平成』という時代を振り返りますと、バブル崩壊による日本経済の低迷、阪神淡路大震災や東日本大震災という未曾有の災禍、そして少子化による人口減少及び超高齢化社会といった終始国難に見舞われた一方で、ITによる情報化社会への変革、グローバル化とともに社会全体が多様化していくという大きな変動期でもありました。小田原青年会議所は1958年5月16日、この地域の志高い青年達が集い全国で139番目の青年会議所として設立されました。昨年創立60周年を迎え、2019年度は新しい一歩を踏み出します。それは今までこの小田原青年会議所の礎を築かれた先輩諸兄の功績を検証し、良いところを継承しながら今の時代に合った青年らしい運動を発信していくためのリスタートするということです。そのためには決して楽観視することができないこの地域の置かれている現状をしっかりと把握しなくてはなりません。この地域の更なる発展のためには人口減少や少子高齢化対策はもとより地域間競争でも勝ち残っていかなくてはならないのです。我々が活動するこの小田原・箱根・真鶴・湯河原には多くの魅力があり、顕在化しているものや未だに潜在しているものもあります。この魅力を誰に対してどのように伝えていくかを我々一人ひとりが認識し、行動していくことが今この地域に青年として生きる我々の使命なのです。2020年には東京2020大会(第32回オリンピック競技大会・東京2020パラリンピック競技大会)が開催されます。インフラの整備や施設などが建設される経済効果以外に間接的な影響として日本を世界にアピールできる絶好の機会なのです。すでにこの地域にも海外から多くの訪日外国人が来ておりますが、この機会を逃すことなく小田原青年会議所の運動を展開していくうえでこの地域の未来を見据えた国際的な歩みを進めていかなくてなりません。2019年度は創立70周年に向けての確かな第一歩として、そしてまだ見ぬ未来のための大きな一歩として、『進取』の精神のもと、この地域に住み暮らす皆様の国際意識醸成に向け果敢に取り組んでいく一年としてまいります。

【持続可能な共生社会の形成】
 共生社会とは地域住民が豊かな人間性を育み生きる力を身に付けていくとともに、皆で子どもや若者を育成・支援し、年齢や障害の有無等にかかわりなく安全に安心して暮らせる地域を共に創っていく社会です。その実現に向けて2030年を期限とする持続可能な開発目標(SDGs)に注目することが重要です。SDGsはゴール1の「貧困をなくそう」からゴール17の「パートナーシッ プで目標を達成しよう」まで、経済・社会・環境にまたがり相互に不可分につながる17の分野の目標が設定されており、国も地方創生に向けた自治体SDGsの推進に取り組んでおります。この地域が国内のみならず世界からも魅力のある地域だと感じてもらうために、私たちがこの地域の特性に合ったSDGsの17の項目についての目標を定め、その目標に向かって邁進していくことが必要不可欠なのです。

【地域経済の活性化】
 地域全体の発展には地域経済の発展が不可欠です。多くの法人や商店が繁盛し個人の所得が増えることで自治体の税収入が増え、行政サービスの向上に繋がるからです。そのために箱根という世界でも有数の観光地を有するこの地域に交流人口を増やすことに尽力していく必要があります。年々、この地域を訪れる外国人が増加しており、2020年の東京2020大会までは増加し続けていくことでしょう。しかし、本来考えるべきことはその後もこの地域に魅力を感じ、多くの外国人がこの地域に来続けていただくことなのです。そのために我々の活動エリアである小田原・箱根・真鶴・湯河原全体で自信を持って世界に発信し続けることのできる歴史・文化・伝統をはじめとするモノ・コトに持続的な磨きをかけていく必要があります。そしてモノ・コトの目に見える部分だけにとらわれることなく目に見えない部分、本質をしっかりと見定め、そこに付加価値を与え、時には新たな価値そのものをデザインし発信しこの地域の活性化に繋げてまいります。もちろん、我々小田原青年会議所の力だけではこの地域の発展に寄与していくことはできません。小田原青年会議所が自信を持って推進していく運動を最大限に発信していくために、先輩諸兄が築き上げてくれた行政や諸団体との信頼関係を更に強固とし、時には切磋琢磨し、この地域の未来を真剣に考え行動することで地域経済の活性化に努めてまいります。

【地域防災力の強化】
 近年、日本国内での大規模な地震や豪雨による被害は甚大なものとなっております。日本青年会議所では、災害発生時における救援相互運営規程を整備し、災害発生時には緊急連絡体制の整備や広域的な災害復旧支援体制の構築を図っています。また、阪神・淡路大震災以降の様々な災害の際には、多くの全国のメンバーが主体的に災害復旧ボランティアとして活動し、被災地の復興活動にもいち早く行動しているのを目にしております。この地域は大自然に囲まれている反面、有事の際には河川の氾濫や山間部の土砂崩れ、沿岸部の津波といった被害が予想されます。災害の激甚への備えを充実させるために、公助だけに頼らずに共助や自助の必要性を地域の皆様と共有し、さらに災害発生時には小田原青年会議所として何が出来るのかをメンバー一人ひとりが熟考する機会が必要なのです。

【主権者意識の向上】
 この国や地域の現状を直視し、未来を真剣に考え、そして何かをしなくてはならないと考えるのならば政治を動かすことが何よりも重要です。政治とは利害関係を調整し、社会秩序を維持し、そして全ての制度やルールがそこで決定されています。昨今の選挙において、候補者の政策を吟味しきれず投票に行かなかったり、候補者の知名度や政党などで投票してしまっている有権者が少なくありません。政策本位の政治選択を推し進め、地域住民によるまちづくりを実現するために、広く開かれた政策討論の場を提供していく必要があります。

【国際意識溢れる人材の育成】
 晩婚化や未婚化が現代の社会現象となっている中、この地域の出生率は約1.0%~1.3%となっております。人口減少により経済や地域社会、社会保障や財政への影響は計り知れないものとなっていますが、少子化や人口減少は地域で対応できるものではなく、国策として臨んでいかなくてはなりません。しかし、この地域の未来を真剣に考える青年として安心して子育てできる環境を作り出していく必要があります。小田原青年会議所では今までもこの地域の未来を背負ってくれる子ども達への教育事業を推進してまいりました。その子ども達が大きくなり、この地域ひいてはこの国の担い手となってくれているのです。今の子ども達が成長したときに活躍する場所はこの国だけに留まりません。2020年には文部科学省による学習指導要領の改訂により外国語活動がさらに重要視されます。そんな時代だからこそ国際意識を醸成することのできる人材育成という観点に重きを置き、今まで小田原青年会議所が推進してきた教育事業を新たな形でスタートさせていくことが必要なのです。この地域に訪れてくれる多くの外国人、またこの地域に魅力を感じ住み暮らす外国人との交流を一つのツールとした事業の構築を推進してまいります。また海外でも通用する人材育成にむけた新たな教育プログラムを構築し、教育行政や地域の方々とともに、この地域の子ども達の未来に役立つべく取り組んでまいります。

【組織を拡大し、共通目的をもつ仲間意識の醸成】
 青年会議所の魅力はメンバー一人ひとりに成長の機会が与えられることです。限られた環境の中で成長する機会を逃してしまっている青年は青年会議所のメンバーとなることで今まで会うことの出来なかった多くの素晴らしい仲間とともに成長することができます。
青年会議所活動をしていくうえで、重要なのがメンバー同士の交流です。素晴らしい事業を成功させるためには、その事業を開催することの意義を考え、参加者の募集について考え、円滑に進めるための運営方法を考えなくてはなりません。一人の人間だけがどんなに頑張ってもその事業は失敗するでしょう。多くのメンバーの知恵が必要なのです。そのためには日頃から熱く語り合えるメンバー同士の交流が不可欠なのです。すでに小田原青年会議所という同じ団体に属しているのですから、みんながこの地域の発展のために汗水を流そうという大きな共通点を持っていることは間違いありません。社会のつながりが希薄化した今こそ、強固な縦と横の結束がある青年会議所こそ必要なのです。

【効果的な情報発信】
 小田原青年会議所はホームページやSNSを率先して導入してきました。近年の情報発信は、急速なIT化により、容易に世界中へ発信することが可能となった反面、取り組み続けなければ取り残された状況に陥ってしまうのも現実です。組織としての信頼性を高めていくため、我々が自信をもって推進している運動を、青年会議所の対内外に周知することで、小田原青年会議所の存在価値を高めていくことができれば、この地域での運動がさらに昇華され、多くのメンバーが入会してくることにもつながっていきます。時代の変化を感じ取り、最善の方法でスピード感を持って効果的な情報発信に取り組んでまいります。

【青年会議所の可能性】
 青年会議所には多くの機会があります。日本青年会議所の諸大会だけでも京都会議、サマーコンファレンス、全国大会。さらに関東地区協議会や神奈川ブロック協議会の大会や事業もあり、多岐に渡り学びや交流の機会があります。しかし、青年会議所の一番の特色は世界各地にLOMがあり、JC運動が行われている国際組織であることです。その世界各地で活躍しているLOMやメンバー一人ひとりの活動を知ることは必ず我々がこの地域でいちJAYCEEとして活動をしていくうえで必要なのです。そして何より私たちが掲げる『世界を感動させる観光文化都市をめざして』という地域ビジョンを達成するためには、毎年開催される世界会議やASPACへの参加だけではなく、小田原青年会議所という一つのLOMとして国際感覚を研ぎ澄ませていくことが重要であり、まずはこの地域の歴史・文化・伝統をしっかりと認識し、それに照らし合わせながらJCIに属する海外LOMとの連携に向け、調査研究を推進してまいります。
我々小田原青年会議所の力だけではこの地域の発展に寄与していくことはできません。小田原青年会議所が自信を持って推進していく運動を最大限に発信していくために、先輩諸兄が築き上げてくれた行政や諸団体との信頼関係を強固にし、時には切磋琢磨し、この地域の未来を真剣に考え行動することで地域経済の活性化に努めてまいります。

【心から信頼される組織へ】
 青年会議所の自己研鑽の機会として議案と会議があります。膨大な情報量や自身の見解、様々な人からの意見などを踏まえて作成する議案、また時に長時間を要する会議。時として精緻で冗長すぎる仕組みが、効果的な事業実施の弊害となり、対外の信用を失うことにつながってしまうこともあります。携帯電話や電子メール、SNSの急速な普及により、簡素化できることが多くなっているのも現実であり、青年が集う組織として必要なものをしっかりと残しつつ新たな実施体制へと見直していく必要があります。
2019年、小田原青年会議所は公益社団法人となって6年目を迎えます。法の順守はもちろん、『公衆の日常生活に欠くことのできない事業』いわゆる『公益事業』の昇華に向け取り組んでまいりました。どのような組織も社会の変化についていけなければ消滅する運命にあります。創立61年目を迎えるにあたり、小田原青年会議所の法人格の見直しも含め、組織の在り方を議論し、地域の皆様に心から信頼してもらえる組織へと発展していかなければなりません。「小田原青年会議所のやっている事業なら行ってみようか」と一人でも多くの方に思っていただけるよう、今一度、小田原青年会議所のメンバーとして何をすることができるのか、また小田原青年会議所は何を求められているのかをメンバー一人ひとりが熟考し、行動してくことが何よりも必要なのです。

【むすびに】
 青年会議所活動は20歳~40歳までと決まっております。青年団体だからこそ明るい豊かな社会の実現に向けて常に考え、挑戦し続けていかなくてはなりません。

『為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり』

上杉鷹山(うえすぎ ようざん)米沢藩藩主

挑戦することで必ず成功と失敗が伴います。失敗した人を取り残してしまったら誰もが挑戦することを諦めてしまい暗い社会になってしまいます。挑戦し続ける人を応援し、失敗してしまった人には手を差し出す、そんな青年団体であり続けることが今を生きる我々の責務なのです。
私は2006年に小田原青年会議所へ入会してから13年間という長きに渡り、多くの先輩に怒られ、導かれ、成長させていただきました。先輩方から受け継いだ熱い想いを胸にしっかりと刻み、2019年度小田原青年会議所は『進取』の精神のもと、常に挑戦しつづけることが必要であることをお伝えし、公益社団法人小田原青年会議所2019年度 理事長所信とさせていただきます。

 

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